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パパの子育て体験談

Vol.2
発明パパの行動はどんな言葉よりも雄弁

渡部さん親子

今回訪れたのは砥部町のナベさんこと、渡部さん。
本業の歯科医の他に発明家としても全国的に有名で、さまざまなメディアでも取り上げられた「くるくる鍋」は5千個のセールスを記録、最新作では歯ブラシ美容という新たな世界を開拓しました。その自由気ままな発想を受け継いだのが三人娘の末っ子である由羽ちゃんで、12 歳にしてユニークな発明を続々と発表。今や若き発明家として各方面から注目されています。

パパPROFILE
  • 渡部さん
  • 52歳、歯科医、発明家、日刊スポーツ講師、JWBA 公認プロウェイクボーダー、作家、マジシャン
  • 中学1年生の娘(三女)のパパ
  • Instagramアカウント
    @crea.tor985(外部リンク)

(1) 自由なパパは遊び担当

必要は発明の母という言葉がありますけど、ナベさんの場合は?

「小学校くらいの時に親から勉強せぇ勉強せぇ言われるのが嫌で、発明で儲けたら勉強しなくてええんじゃないかというので始めたんですよ」

道楽は発明の母、くらいな感じですかね。

「そうですね。でも、もともとガラクタを集めては、組み立ててというのが好きやったんですよ。田舎は娯楽がないですからね」

本格的に始めたのは?

「歯科医院を開業して、一段落した30代からですね。最初は趣味の一環でした」

その頃は娘さんも一緒に?

「いや、その頃はまだちっちゃかったですからね。一緒にやるという感じでもなく、上の二人はまったく興味ないですからね(笑)。でも、趣味のひとつでもあるマジック関係の工作は子どもと一緒にやってましたね。マジックと発明ってけっこう似てるじゃないですか。アイデア勝負みたいな感じで」

人を驚かせるという点も共通してるし…。

「そうそうそう。それが好きやったんですよ。とにかく、その時その時にやりたいことを全部やるというのが僕のポリシーなんで、ウェイクボードだったらとりあえず日本一になるまでやる、発明やったら商品になるまでやる、本を書くんやったら出版できるまでやると」

でも、いざ実行に移すとなると、大変だと思うんですよ。ナベさんの原動力となっているのは?

「とりあえず、自由になるというのが僕の目標なんですよ。何もかもから自由になる。経済的にも時間的にも。でも、今は自由じゃない。そのストレスですかね」

子育ては順調だったんですか?

「基本的に僕は遊び担当なんですよ。だから勉強しろと言ったこともないし、怒ったこともない。奥さんが育てる担当で、僕は遊ばせる担当で、子どもに嫌われたら困りますからね(笑)。ウチはゆる~い感じなんですよ。だから基本的に家の中に物が散らかっていてもOK、姉妹喧嘩してもOK。基本的に家はリラックスする場所ということで」

ママ「夫が言うには、散らかってる方が子供の想像力が豊かになる。きれいすぎると想像力が乏しくなるそうなので」

「そうそう。モデルルームみたいな綺麗な部屋はよくないですよ。だって発明する時でも回りにごちゃごちゃ物がある方がアイデア浮かびますからね。ウチの3階なんかひどいもんですよ」

(2) 三人娘のなかで由羽ちゃんだけが発明の虜に?

由羽ちゃんだけが発明に興味を持った理由は?

「たぶん小学生の時に地元の『少年少女発明クラブ』に入らせたからじゃないですかね。学校で本棚作るという話があったら自分で一生懸命、設計図を書いていたりとか、いろんなものを作るのが好きなんですよ。昨日もYouTubeで駐車場が2階建てになっているような、ちょっと変わった家の特集をずーっと観てましたからね」

ママ「家のところどころに変な物が置いてあったら、これ絶対に由羽ちゃんの仕業だよねというふうになるんですよ。それも日常にあるガラクタで作ったものがポイと置かれていて」

じゃあ発明家を育てようというのではなかった?

「全然違いますね」

ママ「赤ちゃんがティッシュをガーッと出して遊ぶことがあるじゃないですか。夫は一緒になってやってました(笑)。私がやめてよと言うと、こういうのは一回思う存分やったら気が済むからと。しまいには要らない雑誌を持ってきてビリビリと破って、子どもにやってみろみたいな。私が片付けるの大変と言うと、片付けるのは大人がしたらいいことだから、子どもには好きなようにさせてあげたい。散らかしてもいい。片付けたら済むことだからと、言われました」

「子育てというのではなくて、もう勝手に親を真似するだろと。自分の子どもの時のことを考えると、親から勉強しなさいと言われて、わかりました勉強しますとは絶対ならないじゃないですか。でも、親がすることを、子どもは絶対真似するじゃないですか。だから奥さんにもよう言うんですけど、子どもに勉強しなさいと言うのであれば、自分が勉強しろと(笑)。で、この間、奥さんも宅建の免許を取ったんですけどね。子供にがんばれと言うのではなく、自分がやりたいことや学びたいことをやってりゃ、子どもは勝手に真似するだろうという。三つ子の魂百までと言っても、子どもの性格とか知能はある程度遺伝で決まっていて、育て方がどうのこうのではないんですよ(笑)。だから子どもに対しては一人の人間として、自分が好きなようにがんばれよと。こう育てようとか、そんなおこがましいことは考えてなくて、言葉よりも行動で示せということですよね」

発想の芽を摘まないというか、

「基本的に個人の自由にさせています。あと、しゃべる言葉とか書く言葉は気をつけるというのはすごい言っています」

具体的に?

「たとえばマイナスの言葉とか他人の悪口とか。よく、言葉が人生を作るとかいうじゃないですか。だからそれはすごい大事にしてます。たとえば、命令するのではなく、~をお願いしますという一対一の関係ですね」

(3) 子育ての最初の10年はプレゼント期間

▼由羽ちゃんの発明品

由羽ちゃんの発明品は全部で何点くらいですか?

「20くらいですかね。僕のはくだらんものも入れたら無限大にありますけど(笑)」

『ザ・バケツ』は逆転の発想というか、冷風扇を丸裸にしただけですよね。

「そうそう(笑)。電気屋で売ってる冷風扇ってこういうことでしょう」

目の付け所が違いますね。そういうのもナベさんが教えてたのではなく、知らず知らずのうちに?

「まぁ、こうしたらええんじゃないという相談はしますけどね。でも、発明クラブで勝手に作ってきてますね。それと、ウチは全員がジャンルに関係なく本が大好きなんですよ。あと、早く寝る。テスト期間中だろうと何だろうと、9時くらい、ヘタしたら8時くらいにはみんな寝てましたからね」

早く寝る理由は?

「寝てる間に情報とかが整理されて、脳が働きますから。寝ないと賢くならないじゃないですか。運動にしろ勉強にしろ、一回ダウンロードしたら、一回寝て整理しないとダメなんですよね。だからとりあえず早く寝ろという」

じゃあ昔からよく言わている、寝ないで勉強しろというのは?

「まったく意味がないですね(笑)」

とはいえ、女の子3人を育てるのは大変ではなかったですか?

ママ「女の子ばかりでお父さんは肩身が狭いでしょ? とよく言われるんですけど、全然そんなことないよね」

「基本的に子どもは自由にやらせとるし、その代わり僕も自由にやるぞみたいな。みんなそれぞれが楽しいことを自由に、やりたいことは全部やれよというスタンスなんで」

ママ「ウチはみんな仲良しですね」

「(家の中にさえぎるものがほとんどない)こんなオープンな家ですから隠し事も一切ないですからね。子どもと話する時も建前じゃなく本音で話してますね」

子育てに悩んでいる人たちにアドバイスするとしたら?

「子育てって最初の10年がプレゼント期間で、一緒に遊んだりとか楽しめるのは10歳までなんですね。たぶん中学校になったら自分の世界ができて、友だちと遊ぶようになるんですよ。最初の10年間はしんどいと同時に、一番楽しい時間でもあるんですよ。だから区切りが、終わりが見えてるわけですから、その間に楽しめということですね。あんまりカリカリすることなく」

借金してでも楽しめ、くらいな感じですか?

「お金は要らないでしょ。このへんは山や川がたくさんあるので、遊びに行くのも全部タダですよ。愛媛はお金遣わなくとも遊べるところがなんぼでもありますよね」

(4) 由羽ちゃんの一言

将来は何になりたい?

「発明も面白いけど、ちゃんとした仕事がやりたい」

発明以外で興味あることは?

「国内外の、いろんな本を読みます。最近では『英国情報局秘密組織チェラブ』です」

お父さんから学んだことは?

「人生楽しむのが一番(笑)」

どんなお父さんですか?

「やさしいお父さん。怒った顔を見たことないです」

発明が浮かぶ時ってどんな感じ?

「目の前にあるものをふっと見て、これを何かに使えないかな?とか。片付けなさいと言われて、どう片付けたらいいのかわかんない時は、それを使って何かを作ったら物になる。そしたら、片付けなくてもいいので」

お父さんにメッセージを

「いつもありがとう、そんな感じです」

ありがとうございました。

さえぎるものがほとんどない部屋には姉妹の幅広い好奇心を表すかのように、エレクトーン、電子ドラム、なぜかサンドバッグ。ナベさんがグローブミットをはめると、由羽ちゃんは当然のようにグローブに手を入れパンチの練習を開始。…ホント、ご両親から、姉妹、愛犬のモナカに至るまでノリがいいというか、オープンです。かといって秩序がないわけではなく、それぞれが本当の意味の自由をわきまえたうえで、今という時を最大限満喫しているように映ります。ナベさんのトークも絶好調で「子育てって最初の10年がプレゼント期間」という言葉にハッとさせれられた方も多いのではないでしょうか?

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