ハイリスク妊娠とは、「母児のいずれかまたは両者の重大な予後が予想される妊娠」と定義されています。すなわち、妊産婦死亡・周産期死亡・周産期罹患の発生する可能性が高い妊婦・胎児を意味しています。罹患とは病気や障害にかかることで、この場合には将来の後遺症につながる重篤な病気から長期的には問題とならないような軽症の病気まで幅広く含まれています。ハイリスク妊娠のリスクファクター①産科合併症や胎児異常などの生物学的因子、②貧困や低い教育水準などの社会経済的因子の2つに大別されます。例えば、



母体年齢

18歳未満:周産期死亡・妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全の増加
35歳以上:染色体異常・妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全の増加　



母体の経済状態
貧しい:妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全の増加


結婚歴
未婚:妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全の増加


母体の身長
145cm未満:児頭骨盤不均衡による帝王切開の増加


母体の体重

肥満:妊娠高血圧症候群・分娩障害の増加るいそう(不健康なやせ):子宮内胎児発育不全の増加・分娩障害の増加



妊娠・分娩歴

2回以上の流産:染色体異常・子宮奇形・子宮筋腫の存在の可能性5回以上の分娩:癒着胎盤・子宮内胎児発育不全の増加Rh不適合妊娠の既往:Rh抗体による胎児貧血・胎児水腫の危険性巨大児分娩の既往:糖尿病・妊娠糖尿病の可能性難産の既往・分娩時損傷:再発の可能性新生児期の異常・先天奇形:再発の可能性常位胎盤早期剥離・前置胎盤・妊娠高血圧症候群:再発の可能性



嗜好
喫煙:子宮内胎児発育不全・先天奇形の増加過度のアルコール摂取:子宮内胎児発育不全・胎児アルコール症候群の危険性薬物常用:子宮内胎児発育不全・先天奇形の増加


母体の合併症
高血圧・甲状腺機能亢進症・慢性腎疾患:妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全の増加心疾患:母体生命の危険性てんかん・統合失調症などの精神神経疾患:　妊娠による悪化・投薬による胎児への影響多胎妊娠:妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育不全・切迫流早産の増加帝王切開・子宮筋腫核出など子宮手術既往:子宮破裂・癒着胎盤の危険性悪性腫瘍の合併:妊娠に伴う増悪母体感染症:切迫流早産・子宮内胎児発育不全・子宮内胎児死亡・胎児奇形